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 雑誌の書評コーナーで、興味深い本に思えたので読んでみました。
 第一に期待される信長への過剰評価を冷ますという目的は、一応達しています。しかしそれ以上の事は、誉められたものではありません。
 主な内容は「信長公記」などを検討しなおし、派生史料や俗説に影響された、これまでの説を見直すという、近年よく見られる内容です。内容もこのタイプのこれらの本と重複部分が多いです。
 なので、信長の生涯全体を俯瞰して冷静に見直すことはできていますが、amazonの内容紹介等にあった「戦国史の常識をくつがえす画期的信長論」というのは、明らかに誇大広告です。

 そして問題点も、いろいろとあります。
 まず、他の研究者を「信長を過大評価しすぎている」と批判しているのですが、それら全ての研究者が「信長がすべて万能の天才と言っている」と、誤解させるような書き方になっています。
 たとえば「実は信長の戦術は並以下」というのを、他の研究者に対する自分による反証のように繰り返し書いていますが、私が見る限り、信長の戦術能力はそれほどでもないというのは、その他の研究者たちの多くも挙げている事です。
 他にも、著者が「研究者への反証」としてあげている事の多くが、その研究者も書いている事と重複しています。

 一向一揆に関する項も、イデオロギーに狂奔するゲリラ戦を甘く見すぎている嫌いがあります。
 また、一向一揆の徹底殲滅が日本の宗教勢力の権力への影響力を立ったと評価する事は、目的のためには虐殺を肯定するという事だと語っています。
 しかしそれは、著者が否定的に引用している一人の井沢元彦(*)が「その時点での当事者の視点と、後世から見た結果的な歴史的意義は、必ずしも一致しない。だから、信長が残忍な殺戮をしたから、一向一揆殲滅の歴史的意義を肯定できないと言うのは、論理的におかしい」として、批判している論理展開そのものです。井沢氏著作上の例だと、一向一揆の他に、「信長の足利将軍追放は、後世からみれば江戸幕府ふとして帰結する安定した新体制構築に役に立ったし、正義の行いのように見えるが、当時の多くの人の視点からみれば悪行」「ヘレニズム文化という大きな成果の成立に、アレクサンドロス大王の大侵略行の” 功績”を無視する事はできない」と挙げています。

 こうして、著者は信長について否定的な事を次々挙げていくのですが、ほとんどそれだけ。
 著者なりの功罪両方を考えての信長の総合的評価と言うのは無きに等しく、後書きでわずか数行「楽市楽座をした」「各地で搾取していた既存権力を破壊し、結果的に農業生産力の向上につながった」と書くだけです。
 この本の内容だけ読むと信長は、運と地理的事情に助けられただけの、視野の狭い偏執狂というだけで、「そんなのがどうして、あれだけの大勢力を築けたのだ?」となるのですが。
 歴史に通じている人向けなら、信長の長所部分を省略するのもありでしょうけど。しかし、この本の主要想定層は、そういう事もよく知らないで信長を過剰に持ち上げる俗説を信じている一般読者なので、こういう書きかたはまずい。
 
 それと、全体を読んでいて、どうもこの著者「軍事に無知な平和主義者」ではないかとと疑っていたのですが、よりによって後書きの締めくくりでそれが裏付けられました。
 著者は桶狭間の戦いの迂回奇襲説を「だれかが戦争動員のために利用して広めたのではないか」という”推論”を書いています。
 ええと推論するまでもなく、桶狭間の戦いの迂回奇襲説を定着させたのは、陸軍の戦術研究部署で、明治三十年にも、帝国陸軍参謀本部の桶狭間戦図として出版されていると言う「”明確な事実”が確認できているのですが。陸軍参謀本部が「巧妙な奇襲なら対外戦争にも勝てる」と、他者や自分自身を信じさせる根拠として持ち上げていた意図も明白です。
 それなのに著者は”推論”として、「無謀な白兵突撃の根拠として用いられたのではないか」という、さらにトンチンカンなことを書いています。「少数で多数に勝てる、戦略の王道に反した幻想を持たせた」というのならわかるのですが、なぜわざわざ「無謀な白兵突撃」と限定?
 この著者は間違いなく軍事オンチです。

 Amazonで、著者の他の著作について辿ってみたら、メインは野球。評価は散々な物が多かったです。特にサッカーは目の仇に似して相当おかしな事を書いているようです。


(*):井沢氏も、「専門家の過剰敵視」や、「史料絶対視批判と推測による補足の重要性を語るのはいいが、自分の推測を、”仮説”でなく”確定事項”にしてしまう」など、無視できない欠点が多いいです。
 それでも、この著者よりはずっと有意義な、考察や著作活動をしています。
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